てっきり、怖くてうつむいてると思った菜花はお腹を押さえてるようだった。
「あ~、お腹痛いっ。あははははっ」
「……何がそんなにおかしいわけ……」
俺がやっと口にした言葉は、心配した声ではなく、あきれた声だった。
「ははっ、だってさ~。壁ドンじゃないもん。
壁じゃなくって、黒板だもん」
ふぅ、と息をはく菜花の笑いは、やっとおさまったみたいだ。
菜花の言っていることは事実で、俺は壁じゃなく、黒板に左手をついた。
……言っとくけど、黒板についたのは、菜花のせいでもあるんだからな。
お前が教卓の椅子になんか座ってたから、壁にまで追いやれなかったんだっての。


