今更こんな、言葉だけで自分がドキドキしてしまうなんて知らなかった。


それ程までに彼の言葉は真っ直ぐで、時差なく私の元へと届く。


「友達からお願いします」


「はい…!」


それ以外に彼に返せる言葉がなくて、しどろもどろに答えた私に彼はやっぱり嬉しそうに笑って頷く。


友達なんて自分から言っておいて、高校生の“友達”なんて我ながら意味がわからない。これから彼とどう接していけばいいのかなんてもっとわからない。


とにかくこの場をどうにか切り抜けたくて言っただけの苦し紛れの返事に、彼があまりにも嬉しそうに笑うから、自分の中の罪悪感が少しだけ増した気がした。


私は彼とどうにかなるつもりなんてないと思っているのに。


「連絡先交換してください」


「あ、はい」


ごちゃごちゃと考え込む私に彼はどこまでも真っ直ぐに、着実にその手段を広げていく。


あまりの手際の良さに言われるがままに従ってその日は別れた。


家に帰ると佐和から見計らったように電話がきて、思う存分冷やかされるはめになった。