久しぶりに自宅で朝を迎えた。
横には布団に包まりながら、寝息をたてている奈緒の姿があった。
俺はその寝顔に微笑み、髪に触れて、優しく頬にキスをした。
ベッドから先に出ると、朝食の準備を始めた。
もちろん、俺はいい加減な気持ちで奈緒を抱いた訳ではない。
一度は奈緒の気持ちをないがしろにした俺が言える資格などかいかもしれない。
でも、一番俺のそばに居てくれた女は奈緒なのだと遠回りはしたけれど、気づいたのだ。
リビングから聞こえる物音に目を擦りながら、目を覚ました奈緒がリビングに顔を出す。
「佳ちゃん、朝から何してんの?」
「お前に朝食作ってんだよ。腹へっただろ?」
俺はフライパンの卵焼きを皿に移していると、奈緒はその言葉を聞いた瞬間ニッコリ子供の様な屈託のない笑顔をみせた。
そして、急に傍に駆け寄るやいなや、後ろから俺に抱きついてきた。
「佳ちゃん、私、今、世界で一番幸せ者かも。」
俺も背中越しの奈緒の言葉に密かに微笑む。
「夢じゃないんだよね?」
奈緒が不安そうな声で俺にきいた。
「お前は、いつまで寝ぼけてんだよ!馬鹿。」
後ろを振り返り、頭を小突くと朝食のおかずが乗った皿を奈緒に渡し、テーブルに行く様に促した。
その日、奈緒と笑いあいながら、会話をする朝からの食事は不思議と初めてなくらい新鮮だった。
今まで何回も数えきれないくらいあったシチュエーションのはずなのに、奈緒を女としてみた瞬間からこんなにも二人の間の空気は一気に変わるのかと思う。
テーブルに置いていた携帯が鳴ると、睨む奈緒に平謝りしながら、リビングから出て廊下でその電話に出た。
「本木君、今大丈夫?」
それは西岡からの電話だった。
「少しなら大丈夫ですよ。こんな朝から何かあったんですか?」
俺が何気なく聞いた一言で、全ての空気が一変した。
「恵里奈が病院からいなくなったらしいんだ。持病の心臓がまたよくなくって、明日手術をする事になってたけど、本人が酷く嫌がって今日の朝様子を見に訪ねてみると、病室はもぬけのからでさ。もしかしたら君のところじゃないかって谷垣に言われたんだけど、その様子じゃ違うみたいだね…朝早くからごめんね。」
「いえ…力になれなくてすみません。」
俺は静かに電話を切った。
そして、リビングに戻り奈緒に笑顔で軽く謝った後、何事もなかったかのように話す俺は上手く笑えていたのだろうか。
彼女がいなくなったと聞いた瞬間、俺の心の中は酷く動揺していたからだ。
彼女の全てを受け止める事が出来ず、許す事も出来ず、関わりたくないと遠ざけていたのは俺自身だ。
でも、俺は今すぐ奈緒に構わず家を飛び出して、彼女を捜しに行かなければならないという矛盾した気持ちが頭に浮かんでは、理性で押さえつける事に必死だった。
目の前にいる奈緒を愛していくと決めたはずなのに、俺の頭の中はまた彼女でいっぱいだった。
横には布団に包まりながら、寝息をたてている奈緒の姿があった。
俺はその寝顔に微笑み、髪に触れて、優しく頬にキスをした。
ベッドから先に出ると、朝食の準備を始めた。
もちろん、俺はいい加減な気持ちで奈緒を抱いた訳ではない。
一度は奈緒の気持ちをないがしろにした俺が言える資格などかいかもしれない。
でも、一番俺のそばに居てくれた女は奈緒なのだと遠回りはしたけれど、気づいたのだ。
リビングから聞こえる物音に目を擦りながら、目を覚ました奈緒がリビングに顔を出す。
「佳ちゃん、朝から何してんの?」
「お前に朝食作ってんだよ。腹へっただろ?」
俺はフライパンの卵焼きを皿に移していると、奈緒はその言葉を聞いた瞬間ニッコリ子供の様な屈託のない笑顔をみせた。
そして、急に傍に駆け寄るやいなや、後ろから俺に抱きついてきた。
「佳ちゃん、私、今、世界で一番幸せ者かも。」
俺も背中越しの奈緒の言葉に密かに微笑む。
「夢じゃないんだよね?」
奈緒が不安そうな声で俺にきいた。
「お前は、いつまで寝ぼけてんだよ!馬鹿。」
後ろを振り返り、頭を小突くと朝食のおかずが乗った皿を奈緒に渡し、テーブルに行く様に促した。
その日、奈緒と笑いあいながら、会話をする朝からの食事は不思議と初めてなくらい新鮮だった。
今まで何回も数えきれないくらいあったシチュエーションのはずなのに、奈緒を女としてみた瞬間からこんなにも二人の間の空気は一気に変わるのかと思う。
テーブルに置いていた携帯が鳴ると、睨む奈緒に平謝りしながら、リビングから出て廊下でその電話に出た。
「本木君、今大丈夫?」
それは西岡からの電話だった。
「少しなら大丈夫ですよ。こんな朝から何かあったんですか?」
俺が何気なく聞いた一言で、全ての空気が一変した。
「恵里奈が病院からいなくなったらしいんだ。持病の心臓がまたよくなくって、明日手術をする事になってたけど、本人が酷く嫌がって今日の朝様子を見に訪ねてみると、病室はもぬけのからでさ。もしかしたら君のところじゃないかって谷垣に言われたんだけど、その様子じゃ違うみたいだね…朝早くからごめんね。」
「いえ…力になれなくてすみません。」
俺は静かに電話を切った。
そして、リビングに戻り奈緒に笑顔で軽く謝った後、何事もなかったかのように話す俺は上手く笑えていたのだろうか。
彼女がいなくなったと聞いた瞬間、俺の心の中は酷く動揺していたからだ。
彼女の全てを受け止める事が出来ず、許す事も出来ず、関わりたくないと遠ざけていたのは俺自身だ。
でも、俺は今すぐ奈緒に構わず家を飛び出して、彼女を捜しに行かなければならないという矛盾した気持ちが頭に浮かんでは、理性で押さえつける事に必死だった。
目の前にいる奈緒を愛していくと決めたはずなのに、俺の頭の中はまた彼女でいっぱいだった。

