いつかの出来事


大きな運動靴の音は、
いつも軽快に廊下に響く。

ひとりしかいない。




なにやってんのーこんなとこで。



せんせー、。


振り返ると不思議そうな顔をして立ってるせんせーがいた。


せんせーこそ、なにやってんの。


隣の備品室に用事あって。
そしたらアイがいるの見えたから。




せんせーはいつの間にかあたしを
下の名前で呼ぶようになっていた。
生徒みんな、そうなんだけど。



そうなんだー。
あたしはここでぼんやりするの好きなんだよね。
だからいたの。



そういうとせんせーは
あたしのとなりで
窓の外を眺めた。
生徒会室は二階にある。
紅葉の葉が綺麗にみえるし、
この校舎は少し高い土地に立っているから
町並みも見渡せる。
夕焼けが橙色で、
まぶしい。



へー。確かにきれい。
絵に収めたいな。

そう言ったせんせーの声は
いつもより大人っぽく聞こえた。
ちら、と横顔を見る。



夕日で照らされたせんせーの顔。
ただのせんせー。
でも、なんだか少しかっこよく見えた気がして、
ドキッとした。