「……………あ」


しかし、数歩私から離れたところで何かを思い出したかのように声を出して立ち止まってしまった。


私はそちらを向くことも、返事すらもせず両手を動かしていた

また、くだらないことでも言いだすのだろうと思ったからだ。




しかし平岡さんは






「仕事終わったら声掛けて。送るから」







とだけ言い捨てて、すぐに去って行く。







「………誰が声掛けるもんですか」





私のひとことが小さく床へと落ちていく。


しかし

平岡さんの言葉にほんの少しだけ、嬉しいと思ってしまったのは私ひとりだけの秘密だ。