「な……! な、何なんですか! 本当に仕事も進まないしやめてください!」


さっきよりも少し近い平岡さんとの距離。それに焦って、つい口調がキツくなる。

そんな私に構うことなく、ゆっくり、更に、近くなってくる平岡さんの顔


「なっ……へ……ひ、らおかさ」


私はどうすればいいのか分からず、ただ目をぱちくりとさせているだけ。

もう、本当にあと10センチもない距離になった時。無意識的に目をギュッと閉じると………


髪にスッと平岡さんの指先が触れた。



「…………えっ………?」


「ホコリ、ついてた」



目を開ければそこに小さなホコリを右手に摘み、笑っている平岡さんがいた。



「キス、すると思ったでしょ?」

「な……は!? や、やめてください! 全くそんな事思ってないです!!」


ニヤニヤと笑っている平岡さんに私は必死で否定する。いや、否定というか、真実を訴えたに過ぎないけれど。

でも、ただ、無意識的に目を瞑ってしまった私が悪い……のかも、とも思う。



「も…もう、本当話しかけないでください! 早く終わらせて帰りたいので!」


大きな声でそう言い捨て、私はまた再びパソコンと向かい合った。


「はいはーい、分かりましたよーだ」


すると、流石の平岡さんもそう言ってこの場から去ろうとした。