「今ニヤニヤしてたでしょ〜?」

「な…! し、してないよ!」

「いや、してた〜! ほーんとバカップルなんだからぁ……って!もうカップルじゃないのか!」


あはは、とわざとらしく。でも幸せそうに笑ってくれる麻奈実に私もつられて笑う。

すると、またもやドアの向こう側からは不満そうな声がしてくる。


「ちょっとさー、君たち笑ってる暇あるなら早く出てきてくれないかなー? 待ちくたびれて死んじゃいそうなんだケド」


ドアの向こう側で眉を八の字にしている平岡さんが想像できて、私の口角がまた自然と上がっていく


「もう出る?」

「うん……恥ずかしいけど」


麻奈実の一言に私は一度頷き、イスからゆっくりと立ち上がった。


本当に恥ずかしいけれど、外にはタキシード姿の平岡さんが待っているのかと思うと、恥ずかしさよりもそれを見たさが勝ったのだ。

こんなのは惚気になってしまうかもしれないけれど、タキシード姿の平岡さんはさぞかし格好が良い事だろうなぁ、なんて。