その後しばらく平岡さんの噂話をしていると、何やらザワザワとし始めたオフィス内。
ザワザワし始めたとは言っても、それは主に派手めな女子達。
その声に手島さんは「おっと、噂の彼登場か」と笑って呟く
もしかしてと思った私が声のする方へ顔を向けると、やはりそこには噂のあの人がいた。
「あー……っと。おはよう小松さん。遅れちゃって、ゴメンネ?」
やはり、派手目な女子達が発する声の中心にいたのは平岡さんで。
私に気がついた平岡さんはそそくさと私の目の前へとやって来た。
〝ゴメンネ〟なんて言いつつ、頰はすっかり緩んでいる
彼のゴメンネは……いや、彼の言葉はどれも上辺だけなのだろうか。
そんなことを思いながら平岡さんに返事はせず、手島さんへと私は視線を移す。
「え、あれ?ちょっ、俺のこと無視?」
「別に無視とかじゃないです」
「いや無視でしょー、今のは。なになに、怒っちゃった?」
「怒ってません」
「だって、それ怒ってないって顔じゃないじゃん小松さん」
冷静に返してもどんどんヒートアップする予感しかしない、このウザ絡み。
ああ、本当にこの人苦手。
「本当に怒ってません。でも無視したように見えたなら謝ります。スミマセンデシタ。」

