────ヴーヴー。
すると、平岡さんの胸ポケットでバイブ音と共に振動し始めた携帯。
「……っと、誰誰、こんな時に」
平岡さんは慌てて携帯をポケットから取り出すと、げ、と言わんばかりの顔をして「課長だ」と呟いた
そして
「……ま、そういうことだから、小松さん。覚悟しててよネ。 ってことで、あとは適当に社内周っててー」
なんて言い捨てて私を取り残し、資料室から出て行ってしまった。
バタンと音を立てて閉まった扉と、そこにひとり取り残されてしまった私。
「は……い?」
いやいや、ちょっと待って。〝適当に社内周ってて〟って、どういうこと!?
あの人が私の教育係で、あの人が〝社内案内するからついてきて〟って言ったんだよね?
たった今、その社内案内は始まったばかりで。まだ、一部屋目の資料室な訳で。
それも、資料室のろくな説明もなく、話した内容といえば今朝の話と理解不能な冗談話。

