昔からヒサギは、何かと男として不名誉な事に遭遇する事が多かった。

 喧嘩っ早い性格の所為で不良に絡まれたりする事も多かったが、その不良に女と間違えられて言い寄られた事すらある。

 ヒサギにとって、細身で女顔であることはマイナスでしかない。

 それに比べてハルキは体格も良く、同じ男として少し羨ましくも思えた。

 勿論、ハルキには秘密だが。


「おい、本気で上まで着いて来るのか?」


 マンションのエントランスに着いた時、不機嫌そうにヒサギが言った。


「勿論」

「ここでエレベーター乗ってすぐじゃん」

「あんな話聞かされた方の身にもなってよ」


 真剣な顔付きのハルキに何を言っても無駄だと諦めて、2人でエレベーターに乗り込む。

 無言のままのヒサギが気になってハルキがチラリと見遣ると、ギッと睨まれた。