「魔物を殺して、恐怖で支配するんじゃなく、人間をただの食料として見るのでもなく。そんなルイを見てみたいの」

「そんな日が、来るわけがなかろう」

「そんなの、わからない。来るかもしれないでしょう?」

「戯言だな」



そうかもしれない。
でも、現にルイは私の事を生かしてる。
非常食としてかもしれないけど、私が生きていること、それが希望だ。


トントン、
突如ノックの音が聞こえる。



「ルイさま。魔物たちが、ルイさまに接見を求めております」

「そうか」

「ルイさまに献上物があるとのことで…」



胸が、ドキリと高鳴る。
ざわめく胸に、動揺が隠せず拳を握る。



「今行こう」


ルイは何の感情も見せずに立ち上がると迷いなくドアの方へ向かった。
献上物、それは確実に人間だろう。
そして、ルイは迷いなくその血を吸う。
ルイはそういう人だ。
今、そうならない未来の話をしていたのに。



「お前はあまり城をうろつくな」

「わかってるわよ」




その言葉は私を心配しての事ではないことはわかってる。
自分のテリトリーである城を荒らされたくないんだ。

出て行ったルイを見ていた視線を手元の紙に移す。



気を紛らわせるためにも、たくさん書いて覚えるか。
こちらに来て、勉強というものからしばらく離れていた。
勉強をしなくていい状況に慣れるのは早く、いざペンを握ると特有の眠気が襲う。

テスト勉強なんかをしていると、決まって他の事が気になる。
普段嫌いな掃除を始めてみたり、いつもは夜更かしして起きている時間にもかかわらず眠くなったり。
誰しもが経験のある、あるあるだろう。