「じゃあ、本題に入ってさ、文字を教えてよ」
「…なぜ俺様が」
「それはもう聞き飽きた」
紙を差し出しペンをズイッとルイに向けた。
心底面倒くさそうな顔。
だるそうにしながらも、ここまで来てくれただけでも十分進歩なんだと思う。
私がルイに文字を教えてもらうって言ったらハンスがものすごく驚いた顔をしていたから。
ハンスの驚いた顔は少し見慣れてきた。
「モノの教え方など、俺様は知らん」
「そうだよね…。じゃあ、文字ってさ、あ、ならあっていう文字があるの?それとも文字自体になんかの意味があるの?」
「…それぞれに文字がある。それを組み合わせて文を作る。話し言葉と同じだ」
それじゃあ、根本的なものは日本語と同じってことかな?
だったらと、ルイに50音の言葉をすべて書いてもらうことにする。
私の慣れ親しんだあかさたなの順で。
それこそルイはものすごく嫌な顔をしたし、文句も言われた。
それでも、どうにか頼み込んで書いてもらう。
見慣れない文字だからか、字の綺麗さとかよくわからないけど、ルイの字は俺様で乱暴者とは思えない、繊細な字をしているように見えた。
「へえ…」
ルイの字で書きならべられた50音。
よくよく見れば、法則もあるのがわかった。
それは、あいうえおという基本の文字があって、それにたとえば“か”なら“か行”にあたる文字がある。
そのか行にあたる文字とあ行にあたるを併せてかきくけこという文字になる。
簡単に言えば、私の世界でいうローマ字みたいなものだ。


