どうして?
この前はあんなに優しい言葉をかけてくれたのに。
「ルイ?どうして」
「なんだ、出て行かんのか。なら俺が出て行こう」
自分の呼び方だって“俺”になっているのに、その言葉はひどく冷たい。
なんで?
「ルイ、ちょっと待ってよ」
私の横をすり抜けようとするルイの腕を掴んだ。
交わされる視線。
吸い込まれるような漆黒の瞳。
ルイは、突然私の腕を掴み返すと私の首筋に顔をうずめた。
「あっ…!」
鋭い痛みと、血を吸い上げられる感覚。
身体の力が、抜けていく。
「ルイさま!」
ハンスの声に反応したルイが、私の身体を突き飛ばした。
床に転がる私の身体に、ハンスが駆け寄った。
ルイを見上げると、動揺したように視線を泳がせていた。
酷く、傷ついた表情を見せる。


