俺様魔王の甘い口づけ



「王子の名は、リューク。今は公務で出ておるが、明日には戻ってくる予定だ。顔合わせは明日にでもすればよい」

「あ、あの…」

「聞けば、身寄りがないのであろう?ならば、ちょうどよいではないか」



よくない!
この世界に身寄りがないだけで、帰る場所はあるんだから。



「ごめんなさい!私…帰ります!」




思わず、そう言って駆け出した。
周りの従者たちが慌てて追いかけようとするけど、部屋を飛び出した瞬間その扉が勢いよくしまった。



「え…?」



「な、開かない!?なぜだ!待て!」





扉の向こうで慌てる声。
い、今のうちだ!


私は来た道を慌てて引き返し必死で走り抜ける。
その先々で私を止めようと駆け出す家来たちがいたけど、みんな何かに躓いたり突然突風が吹いたりで私のところまでは来られない。





いったい、どうしちゃったの?




私は時々振り向きながらも城の中を走る。
あと少しで城から出れる!
そして、その扉に手をかけた瞬間、向こう側から勢いよくその扉が開かれた。





「わっ!」