私は空港ロビーにいた。

腕時計を見ながら、私は帰りを待っていた。

今日ここに、長い留学生活を終えて帰ってくる人がいる。

私の愛しい人。

あの日と同じベージュ色のジャケットを着て、その人を待っていた。

窓ガラスの外を見る。

暖かそうな春の日差しが、コンクリートの地面を照らしていた。

そう、だったな。

あの日もこうして、私は待っていた。

あの日と今日の違いは、バラを持っているか持っていないか。

あの日から、いろいろあったんだな。

結ばれて、犯して、悩んで……いろいろあった。

でも私からして見れば、幸福だった。

本当に好きな人と結ばれた喜びは、幸福なこと。

壁はあったけど、今ではそれも消えてなくなっている。

「誠司さん」

後ろから、呼ぶ声がした。

私はスローモーションのように振り返る。

愛しい人がいた。

その人が、私に向かって走ってくる。

私は両手を広げ、その人を迎えた。


☆★END☆★