でも、どうして優衣はパンフレットを捨てたのだろう。

「離れたく、ないからじゃない?」

朝香が言った。

「離れたくない?」

私は聞き返す。

「それ見てみると、どうやら3年はいなくちゃならないみたい」

「3、年……?」

確かに、そう書いてあった。

在学期間は3年だと。

「3年もあなたと離れることになるのよ?

優衣の立場からして見れば、嫌だと思うわ」

朝香の言葉を聞きながら、私はパンフレットを持つ手の感覚が麻痺していくような気がした。


優衣が離れる。

そう思うと、私は眠れなかった。

水を飲みにキッチンへ行くと、灯りが灯っていた。

「優衣?」

私は声をかけた。

「誠司さん…」

優衣は私から目をそらすように、うつむいた。

何故だか沈黙。

その沈黙を破ったのは、私の方からだった。

「留学、考えているのか?」

優衣の顔があがった。

「……知ってたんですか」

「朝香から聞いた」

優衣はまたうつむく。