すっかり寒くなった夜のことだった。

風呂上がりはすごく寒く感じた。

洗った髪をバスタオルで拭きながら、パジャマ姿でリビングに行くと、朝香が待っていた。

「帰ってたのか?」

私が言うと、朝香は深いため息をついた。

「どうした?」

私が聞くと、朝香は気づいたと言うように振り向いた。

「ああ……優衣のことなんだけどね」

「優衣がどうした?」

「これなんだけど」

朝香から何かを渡された。

それは、クシャクシャに丸められたパンフレットのようなものだった。

「優衣に用があって部屋に行って見たら、ゴミ箱にこんなものが捨ててあったの」

私は丸められたパンフレットを引き伸ばした。

どうやら、海外の美術学校の案内らしい。

「優衣、留学を考えているのかしら」

朝香が言った。

「留学?」

「だって、学校から案内が来るくらいよ?

確かに、優衣の絵はコンクール入賞もだてじゃないくらい上手だわ。

学校から案内が来ても、おかしくないわよ」

確かに、そうだ。

前見せてもらった時、優衣の絵は素人とは思えないくらい上手なものだった。