見られた……。

私たちは何も言えない。

朝香は唖然として、私と優衣を見ている。

その視線に、私は何も言えない。

違うと、否定できない。

朝香の視線とにらみあっていたら、優衣がそっと離れた。

優衣も何も言わず、黙っていた。

沈黙が流れる。

「優衣」

沈黙を破るように、朝香が娘の名前を呼んだ。

優衣の躰が震える。

私は震える彼女の躰を抱き締めたかったが、朝香の目の前では何もできない。

「ちょっと、出てってくれる?」

震えながらうなずくと、優衣はリビングを出た。

ガチャと、ドアを閉める音だけが部屋に響いた。

優衣を出て行かせたと言うことは、私は朝香に理由を問われることになるかも知れない。

何故自分の娘とつきあっているのか。

なれそめから何から何まで聞かれるだろう。

優衣が出て行ったことを確認すると、朝香は深いため息をついた。

何も知らなかったから、当然のことだろう。

私は自分の爪先を見つめた。