「想像妊娠だったみたいです」

「想像、妊娠?」

聞きなれない言葉に、私は首を傾げる。

「妊娠したいって思っていると、妊娠初期の症状が起こるみたいなんです。

わたし、もしかしたら心のどこかで“妊娠したい”って思っていたらしくて…」

それで、想像妊娠が起こった訳か。

「ごめんな。

騒がせちゃって」

「謝らなくても、いいですよ」

優衣が言った。

言ったその顔は微笑んでいた。

優衣は私の髪に手を伸ばすと、
「そんなに、落ち込まないでください」
と、私の髪を撫でた。

「本当に、悪かったよ」

私は優衣を抱き締めた。

ガチャと、ドアが開く音がした。

「えっ………?」

朝香だった。

私と優衣、朝香の視線がぶつかる。

見られた。

バレてしまった。

私と優衣の関係が、朝香に知られてしまった。

冷たい沈黙が、私たちの周りに流れた。