「悪い」

私は紅くなった彼女の頬に触れた。

頬の熱が指に伝わってくる。

熱くて、指が火傷しそうになった。

目が合った。

熱っぽさがわかるくらい、その目は潤んでいた。

「言い過ぎた」

チュッと、真っ赤な優衣の頬にキスをした。

ハッとしたように、優衣はキスされた頬を隠すように手で押さえると、
「…ほっぺ、だけですか?」
と、言った。

「不満か?」

私が聞くと、優衣は恥ずかしそうにうつむいた。

クスッと、私は笑うと、優衣を抱き寄せた。

「欲張り」

そっと、優衣の耳にささやく。

「欲張りにさせたのは…誠司さんでしょ……?」

強く言い返すことができない優衣の声。

その通りだと、私は思った。

優衣をこんなにも欲張りにさせたのは、私だと。

私が彼女を汚した。

“罪”と“毒”で、彼女を汚した。

一生消えることのないそのシミを、私はつけた。

唇にも、吐息にも、指にも反応するよう教えたのは、私だ。