忙しい夏はあっという間に過ぎ、季節は秋を迎えた。

少しずつ高くなって行く空に、やがて訪れる冬を感じた。


クーラーの必要もないほど涼しくなったリビングで、私はトランペットの手入れをしていた。

そばで、優衣が見ていた。

「丁寧ですね」

優衣が言った。

ピストンの手入れをしていた私は、
「大事なものだからね」
と、言った。

「お前にも似ていると思う」

「わたしと、トランペットが?」

不思議そうに目を丸くする優衣。

「これみたいに、反応するから。

唇にも、吐息にも、指にも、私が与える刺激に、お前は全て喜んで反応するから」

真っ赤になって、うつむく優衣。

「そうやって、言葉1つで感じるところも」

意地悪を言い、彼女の反応を楽しむ私。

「――イジワル…」

聞こえるか聞こえないかの小さな声で、優衣が言った。

躰中の血液が顔に行ったのかと思うくらい、顔が真っ赤だ。

ちょっと効き過ぎたかも知れない。