突然の帰宅に、私たちは慌てて唇と躰を離した。

朝香がリビングに入ってきた。

優衣が私に背中を向ける。

私も何事もなかったような顔をすると、朝香を迎えた。

「お腹空いちゃった〜。

何かある?」

そう言う朝香に優衣が
「すぐご飯の用意するね」
と、わざとらしいような明るい声で言った。

それから小走りでキッチンの方へ行った。

「あら」

朝香が私に気づいた。

「帰ってたの?」

笑顔で話しかけてくる朝香に、私は後ろめたさを感じた。

「たまには早い方がいいと思って」

笑顔を作り、私は言う。

「そう」

朝香の笑顔に、私は目を反らしたくなった。

他の女と関係を持ってしまったこと。

その女は、娘であること。

私は優衣と結ばれた。

朝香は、何も知らないままでいて欲しい。

傷つくのは、私1人で充分だから――。