「なあ、佐々木」

私は言った。

「はい」

スケジュールの確認をしていた佐々木が顔をあげる。

「その…あるのか?」

「何がですか?」

「…血の繋がらない親子の恋って」

マヌケな質問だと、私は思った。

小学校の低学年が言い出しそうな質問だと。

その質問に、佐々木は目をパチパチさせた。

「いや…やっぱりいい。

忘れてくれ」

「あるんじゃないですか?」

佐々木が言った。

「『源氏物語』か何かの話にも、血の繋がりのない親子の恋はありますし…」

話の中だけだろと、私は言いたくなった。

現実はどうなんだと。

そう、佐々木に言いたかった。