彼女の隣には、私よりもいくつか年下の若い男がいた。

会社の部下かと一瞬思ったが、朝香はその男と楽しそうに腕を組んでいた。

信号が青に変わった。

私は車を走らせた。

「止めなくても、いいんですか?」

優衣が言った。

私は精一杯の笑顔を作り、優衣に微笑みかけると、
「会社の関係者かも知れないでしょ?」
と、言った。

それ以上、優衣は何も言わなかった。

朝香の浮気を知った時点で、ずっと隠していた優衣への思いがあふれたのかも知れない。

けど、この時の私はショックのあまり気づかなかった。

例え気づいても、私はきっと気づかないフリをしていたのかも知れない。