人は一生に一度、大きな罪を犯す――。

そう言っていたのは、一体誰なのだろうか?

「深く考えなくても、いいんじゃないですか?」

他人事のように、お前が言った。

「考えなくてもいいって?」

私は聞く。

「あんまり深く考えていたら、躰に毒ですよ。

誠司(セイジ)さんも、そんなに若くはないんですから」

妻のように心配するお前に、私は苦笑した。

そして、思った。

私はもうすでに、大きな罪を犯している。

お前を愛したと言う罪を――。