「もちろん、ただで殺すわけではない」


今日はあらかじめ置いてあった空き缶に灰を落としながら、男が言った。


「私がストーカーを殺せば、成功報酬として一千万円をいただく」


そんな大金は持っていない、と言うと男は、それなら全財産だ、と言った。


男の声は威圧的なものではなく、坦々としている。


「殺せなかった場合、もしくはストーカーを殺せても真壁千鶴が殺されてしまった場合、金は不要だ」


この言葉で、俺は決めた。


「わかった。俺の未来を変えてくれ」


わざわざこの男が千鶴を殺すとは思えなかった。


失敗すれば金を払わなくてもいいというのであれば、詐欺だとも思えない。


千鶴が殺されなくて済むなら、全財産を失ったって構わない。


そう思った。