オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



自宅に到着しても彼の不機嫌は治まらず、

視線すら合わせてくれなくなっていた。


必死に打開策を考えてみるものの、

何一ついい考えなんて浮かんでこない。


彼は無言で自室へ入ってしまった。


ドアをノックしようと片手を上げるものの、

叩く勇気が湧いて来ない。


また素っ気なく拒絶されたらどうしよう。

冷たい視線だけならまだしも、

私の存在自体を振り払われたらどうしよう。


掛ける言葉が見当たらず、ドアの前で立ち尽くす。



私は静かに瞼を閉じて、想い描いた。


大きな試合の前はいつも緊張して気合いで負けそうになる。

そんな時はいつだって心に未来を描いて来た。


勝利した自分。

喜んで笑顔になる母の姿。

そして、誇らしそうに見つめる父の姿を。


だから、自分のゲン担ぎをしてみようと思った。


ドアに向い、深呼吸。

両手をギュッと握り、肩の力を抜いて……。


『希和』と優しい声音で囁きながら

破顔した彼がギュッと抱きしめてくれる姿を。



ヨシ!!  

いざ、勝負!!