先輩と肩を並べて歩いて来た先に、
幻でも胸がキュンと疼いてしまうような人が……。
「先輩、すみません!彼が迎えに来てくれたみたいですっ!!」
「えっ?」
「お先に失礼しますッ!!」
真横にいる先輩に視線も合わせず、
挨拶の言葉だけを投げかけて―――――。
黒塗りの車に凭れかかって、
こちらに雷魔ビームを向けている人へとダッシュした。
「京夜さまぁ~~ぁ~~ッ!!」
私の声に反応するように鋭い冷視線が一瞬歪み、
そして、腕組みしていた腕をゆっくりと解いてくれた。
それって、私が飛び込んで抱きついてもいいって事ですよね?!
「んッ!!」
「おいっ、危ねぇだろっ!!」
「だってだって、嬉しくてッ」
仕事用のセダン車で
まさか、迎えに来てくれるだなんて思ってもみなくて。
嬉し過ぎて、頭がおかしくなりそうっ!
本当は凄く不安だった。
もしかしたら、今夜は婚約相手の女性と
ゆっくりお食事デートでもするんじゃないかって……。
既に心のどこかで諦めていたから……。
こうして、私のもとに来てくれただけで満たされる。



