俺はその手を軽く払い除ける。


「熱は無い。俺は至極真面だ」

「真面じゃないわよッ!!どうかしてるわっ!!」


狂乱状態の母親を真っ直ぐ見つめ、


「話はまだ終わってない」

「話って、何の話よッ!もしかして、希和さんの話も京夜の妄想なの?」

「は?」

「だから、現実から逃れようと、頭がおかしくなってるんでしょ?」


母親の脳内が混乱して、あらぬ方向へ思考が向いてしまったようだ。


「落ち着いて」

「落ち着いてなんていられないわよっ」

「頼むから落ち着けよ!これには深い事情があるから」

「………へっ?」


俺の真意を探ろうと腰を下ろした母親に

俺は真剣な表情で昨日の出来事を全て打ち明けた。



全てを聞き終えた母親は黙り込む。

きっと、希和の事を考えているに違いない。

俺もそれだけが気がかりで……。


暫しの沈黙を破ったのは母親だった。


「状況は理解したわ。希和ちゃんの精神的苦痛を考えたら、かなり無謀よね」

「………だよな」

「でも、京夜が切り捨てるような人間じゃなくてホッとしたわ」