俺は彼女の名を口にしていた。
それはごく自然というか。
それ以外に考えられなかったというか。
だって、俺にしか分からない彼女の証が………。
たった二文字、
『いえ』というその声。
それと、
俺がデザインした世界に1つしかないキャップの持ち主だという証。
『違う』とは言わせない。
彼女ではないのなら、説明がつかない。
この掴んでいる手を離してしまったら
もう二度と掴むことは出来ないと、そう思った。
目の前の女性は視線を落としたまま微動だにしない。
だから俺は、もう一度、
いや、何度でも彼女の名前を呼ぼうと息を吸った、----その時。



