帰国当日。
両親と護衛の者らと共に専用機で帰国予定の俺は、
両親より一足先に空港に到着していた。
というのも、これと言って目当ての物があるわけじゃないが、
ただ何となく、彼女に合うような物があるかもしれないと思って。
フランスに来たのに彼女へのプレゼントを殆ど買っていない。
彼女が帰って来た時のことを一晩中考えていた。
ターミナル内のショップを護衛を引き連れて片っ端から廻り、
気になった商品を次々と買い込んで……。
彼女の好みが分からないから、とりあえず手当たり次第手に取って……。
そんな俺に周りの視線が痛々しいが、周りの反応など気にしない。
税金を山ほど納めるのだから、誰にも文句は言わせない。
「京夜様、そろそろお時間です」
「あぁ」
護衛の1人が俺に耳打ちした。
大型カートに積まれた荷物を眺め満足した俺は、
護衛を引き連れて専用入口へと向かったーーーーー。
一般客とは別の通路を通り、専用のゲートへと向かっていると。
「ん?」
キャビンアテンダントと思われる制服を着た女性の後ろ姿が彼女に酷似していて、
俺は思わず立ち止まってしまった。
歩く姿が似ているというか、背格好がそう思えるというか……。
女性では長身の部類に入るであろう彼女の姿が重なって見えて……。
深呼吸した俺は、冷静さを取り戻した。
昨日の今日だ。
さすがに気持ちの整理の付け方は心得ている。
同じ背格好、似た歩行姿であったとしても。
さすがに海外の航空会社の制服を着ているはずがない。
航空会社の制服によく似た私服か?
いやいやいや、あり得ない。
俺は自分に言い聞かせるようにもう一度深呼吸した。
*********
専用機には、俺と両親用の個室の他にゲストルームが1つ。
護衛やスタッフの座席がある空間とギャレーのような小部屋もある。
ファーストクラスよりも広々とした個室空間は、
ホテルの一室を思わせる設備が搭載されており、
ソファーやベッドは勿論のこと、シャワーまで完備されている。
俺は愛用の部屋に入るとすぐさまパソコンを立ち上げ、仕事に取り掛かった。
仕事を片付け、彼女を迎えに行くために……。



