オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



スノーホワイトの色味のドレスは、トレーン部分に刺繍が施されており、

観客は視線の先にあるそのトレーンに皆魅了されているのだが、

つば広帽子のつば部分の陰に隠れたモデルの顔が、一瞬彼女に見えた。

魂を抜き取られてしまったかのように見入ってしまう。

金縛りに遭ったみたいに呆然としている間にモデルはターンし、来た道を戻ってゆく。

モデルウォークだからか?

歩く姿の雰囲気は全く違う。

女性はメイクでだいぶ雰囲気も変わる。

けれど、ほんの一瞬だが、視線が合った気がした。


ショーが終わりに差し掛かり、モデルが次々と姿を現した。

俺はもう一度彼女の顔を確認しようと少し身を乗り出すと、

みかが無言の圧力を加えて来た。

『みっともないから止めなさい』と。

俺だって分かっている。

クールに鑑賞したいのは同じだ。

だが、もう一度だけ、確認したくて……。


デザイナーであるJ氏が最後に姿を現した。


「ん?」


普通であれば、ショーの最後にデザイナーと共にランウェイを歩くのは、

デザイナーの渾身の作品である為、デザイナーと腕を組んで登場することが多い。

だが、俺の目の前に現れたのは、J氏の両脇にモデルが。

両側のモデルと腕を組み、優雅に歩くJ氏は満面の笑みを浮かべ

その脇に堂々と歩くモデルの2人。

手前側のモデルは、ラベンダー色のドレスを身に纏い

妖精をイメージしている為、スティックを客席に向け振り翳している。


そして、奥側にあの白いドレスを身に纏ったモデルがいる。

けれど、俺とは反対側の客席に視線を向けている為、表情がよく見えない。

再び見た感想は、はやり違うように思えた。

歩く姿勢がそう思わせるのか、

ポージングが綺麗に決まっていて、ドレスの特徴を良く表現出来ていることもあり

プロのモデルだと思えてならないからだ。


ハイヒールで歩くことが苦手だった彼女のことを思い出すと

到底同じ人物だとは思えなかった。

どうかしている。

冷静に考えてみれば分かること。

彼女がモデルとしてショーに出るわけないのに………。