オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



みかは鋭い視線を向けたかと思ったら、その場にいたスタッフに話しかけた。

暫くして俺の元に来た彼女の手には簡易包装されている傘が2本。

その1つを俺に差し出した。


「これ、京夜のハニーに」

「は?」

「だから、これを京夜のハニーにプレゼントするわ」

「…………」


どう切り出していいのか言い淀んでいると、

みかは俺の背後にいる護衛の者に彼女の分を預け、自分の護衛の者に自分の分を預けた。


「伯母様から聞いてるわ。大丈夫よ、そのうち帰って来るわよ」

「…………だといいけどな」

「そんな弱気だからダメなのよ」

「…………」

「何も考えず、俺の胸に飛び込んで来い!くらい言えないから戻るに戻れないんじゃない」

「っ……」


みかは手をひらひらと振りながら、隣のブースへと歩いて行く。

みかに言われて改めて思う。

本当にそうだ。

彼女がどんな状態であれ、俺は俺だし、彼女は彼女だということに変わりはない。

学歴や容姿に惹かれたわけじゃないし、

そもそも、俺に『恋愛』という感情を抱かせたのも彼女だ。

運命や宿命という言葉に雁字搦めに囚われていたのかもしれない。

もしかしたら、家を出たことを悔いてるかもしれないし。


ヨシ。

思い立ったが吉日。

今から彼女に逢いに行くぞ!


「みか、悪いが俺は………」

「…………ん?…………何て?」


みかに駆け寄り、悪いがショーには同席出来ないと伝えようとした、その時。

一瞬視界に彼女らしき人物を捉えた気がした。

辺りをキョロキョロと物凄い形相で確かめる。

だが、それらしい女性の姿は無く、見失ってしまった。

気のせいだろうか?

俺が逢いたいと思うばかりに、似たような容姿の人を重ねてしまったのかもしれない。

ほんの少し期待してしまった分、自分の勘違いなのに落胆する愚かな自分。

深い溜息を吐いていると、みかが覗き込んで来た。


「頭でも痛いの?」

「いや、…………ここが」


苦しい胸を拳で軽く叩くと、みかは早とちりして護衛にすぐさま合図した。