オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



とある寺院の庭園に施された特設会場。

ここがフランスとは言っても、

世界4大ファッションショーの一つでもあるパリコレ(正式名称はLa semeine de la mode:ファッションウィーク)ではない。

パリコレは毎年3月と10月にプレタポルテ(高級既製品)コレクション、

1月と7月にオートクチュール(オーダーメイド)コレクションの開催のこと言う。


だが、今は5月。

世間でいうパリコレとは少し違うかもしれない。

毎年開催されるパリコレでも人気のデザイナーであるJ氏は昨年不慮の事故に遭い、

パリコレどころか、デザイナー生命も危ぶまれるほどの大怪我を負った。

その後、必死のリハビリと周囲のサポートもあり、今日が復帰第1弾だという。


俺の両親が親しいこともあり、会場の設備や警備などを全面バックアップすることとなった。

ショーの会場が狭く、あまり動かずに済むなら母親も参加出来ただろうが、

さすがにこの広大な敷地で、

しかも、舗装されてない部分もあるような庭園を歩き回るのは無理があるというもの。


俺はみかと共に挨拶をする為、J氏の元を訪れた。


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ショーが始まるまでの間、庭園内の特設会場を見て廻ることにした俺ら。

みかのお目当てを探すため、あちこち歩きまわっていると、


「あっ、あそこみたい!」


みかの瞳が一瞬で輝いた。

そして、俺にアイコンタクトを取ると、一心不乱に走り出した。


「おいっ、転ぶぞ!」


俺の声なんて全く聞く素振りも見せず、

みかは10㎝以上もあるピンヒールでお目当てのブースめがけて猛ダッシュ。

仕方なく後を追うと、そこには色鮮やかなレイングッズが並べられていた。