久しぶりのショーだが、それなりの恰好をしないといけないのは分かる。
さすがに、足を引きずって歩けば目立ってしまう。
仕方なく承諾すると、みかは一瞬で目を輝かせた。
やっぱり着飾るのが好きなんだな。
結婚前はしょっちゅうショーも見に行ってたし。
そういう世界じゃない所に嫁いだようだ。
そんな事を考えながら、デザートを口にして………。
両親と別れ、俺らは衣装を調達しに行きつけのショップへと向かった。
みかは、黒とアイボリーのバイカラー仕立てのドレスを選び、
俺はダークブラウンのスーツに落ち着きのあるオレンジ色のポケットチーフを忍ばせ、
四つボタンのベストとブラウンがかったワインレッドのネクタイを結んで。
セレブ御用達の店だから、店内奥にヘアメイクも出来る部屋があり、
みかはそこで別人と化すほど煌びやかに変身した。
「うーん、まぁまぁね」
「勝手に言ってろ」
「顔がパッとしないのよね~」
「失礼だぞ」
「エスコートするのが愛する女性じゃないからって、もう少し凛々しい表情出来ないの?」
出来るわけないっての。
嫌々行くのに……。
隣を歩くのが彼女だったら、もっと完璧にセットしてるって。
シャワー浴び直すし、髪だってセットし直すのに。
溜息が駄々洩れ状態で視線を泳がせていると、
舌打ちしながらも、みかは店員に挨拶し颯爽と歩きだした。
ったく、アタシ様の相手は拷問だ。
店の前に待機している車に乗り込み、会場へと向かった。



