義理のご両親にはお揃いのパジャマを購入し、
『ダーリン、ダーリン』と連呼する愛しの旦那へは
事前にオーダーしておいたオートクチュールのYシャツを購入した。
お気に入りの店らしく、サイズは店の方で管理しているため、それほど時間もかからずに済んだ。
「最後は?」
「もちろん、ディナーで」
「フッ」
歩き疲れたのか、みかもすっかり疲労を滲ませていた。
みかが予約しておいた店に到着すると、俺の両親が既に店内で待っていた。
「聞いてないぞ」
「せっかく近くにいるんだもの、いいじゃない。私は逢うの久しぶりだし」
「ったく」
別に両親と食事がしたくない訳じゃない。
ただ、ほんの少し気疲れしそうで嫌なだけ。
「伯父様、伯母様、ご無沙汰しております」
「見ないうちにすっかり大人の女性になったねぇ」
「まぁ、伯父様ったら」
出た出た出た、お世辞の運動会とでも言うのか?こういうの……。
会話に相槌を打つのも疲れるっての。
3人が楽しく会話するのを聞き流し、運ばれて来た料理を次々と食す。
黙々と食べていてもちっとも美味しくない。
こんなんだったら、そこら辺のパン屋でバゲットを買って食べた方がマシだ。
3人の会話に入らず、店内のアンティークを眺めていると。
少し離れた場所に座った女性の後ろ姿が、彼女によく似ている。
思わず見入ってしまった。
だが、オーダーをする時の雰囲気がだいぶ違うように思えた。
髪型が違うからかもしれないが、勝手に落胆。
「京夜?………聞いてる?」
「あ?…………ごめん、何?」
「この後に、ショーに付き合ってくれない?」
「はぁ?」
「伯父様から招待状を頂いたの」
「………」
「京夜、悪いわね。さっきも言ったけど、足を軽く捻ってしまって、ヒールは暫く履けそうにないのよ」
「ッ?!」
足を捻った?
聞いてないぞ。
思わず、テーブルの下を覗くと、母親の足には包帯が巻かれていた。



