オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



「珍しいな、……こういう店に入るの」

「ウフフッ」


ハイブランド志向のみかにとって、路地裏の小さなアトリエっぽいお店に入るなんて意外だった。

不思議に思いながら後を追うと、

みかは丁寧に刺繍が施された小さな白いベビーシューズを2足購入した。

店を出ると、みかは先ほど買ったうちの1つを俺に差し出した。


「これ、玄関に飾って」

「ん?」

「ヨーロッパでは、玄関にベビーシューズを飾ると幸運が訪れるらしいの」

「へぇ」


やっぱり女性なんだなぁと感心してしまった。


「何、その顔」

「失礼だぞ」

「馬鹿にした感じが、すっごく嫌」

「だったら、もう帰るぞ」

「あっ、……それは困る。もう少しだけ付き合ってよ」

「………ったく」


媚を売るような素振りを見せたわけじゃない。

バッグから手帳を取り出し、まだ買い残しがあると脅迫して来たからだ。

さすがに、手土産も買わずに帰すわけにもいかず。

俺は渋々歩き出した。


「あと2軒だぞ」

「分かってるって」


俺が急かすものだから、焦って辺りをキョロキョロし出した。


「時間はあるから、ゆっくりでいい」

「………うん」


いかにも観光客といった素振りを見せたらスリに遭ってしまう。

だから、いつでも堂々としてないと危険を伴ってしまうから。

一応護衛の為に、少し距離を取った状態で4人の護衛が見張っているが、

犯罪を犯す奴らはそんなことは承知の上で仕掛けてくる。


学生の頃にボーっと歩いていたら、見事にすられてしまって嫌な思いを経験してる。

お金が問題なんじゃない。

人として見下された感があるというか、

隙があると思われていること自体が問題というか。

常に堂々としていないと、いつどこで騙されるか分からない。

生きていくということは、常に危険と隣り合わせだと両親から教わった。




みかの半歩後ろを歩きながら、護衛の者とアイコンタクトを取ってーーー。