翌日。
清々しく晴れ渡った空を見上げ、肺一杯に空気を吸い込む。
普段は東京のど真ん中で生活していることもあり、
こんな風に自然を感じて過ごすことは難しい。
たまにはこういうリフレッシュも大事だと改めて実感していると、
インターホンのチャイムが来客を告げた。
「早過ぎるだろ」
一瞬でどんよりとした気分になる。
もう少し自分の時間が欲しいのに。
重い足取りで門の解錠ボタンを押すと、甲高い声が遠くの方から聞こえて来た。
「遅い遅い遅い遅いっ!」
「あぁ~悪い悪い」
「もう、心にもないくせに」
「分かってるなら、いちいち責めるな」
「もうっ」
みかは待たされたことへの八つ当たりなのか、
ソファーに置かれたクッションを投げつけて来た。
「朝は弱いお前だったのに、いつから早起きになったんだよ」
「いいじゃない、そんなこと」
みかはぷくっと膨れっ面でソファーに腰を下ろした。
「珈琲」
「ここは店じゃない」
「ミルク多めで」
「俺は使用人じゃないぞ」
みかのオーダーを軽くスルーしていると、みかはテーブルの上に10ユーロ紙幣を置いた。
「別に金が欲しいわけじゃない」
「知ってる」
「ったく」
史上最強のアタシ様だということを再認識。
仕方なく、ミルク多めのカフェラテを淹れてやるか。
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1時間ほど世間話をして、出掛ける準備を始めると。
「今日は弾丸ショッピングだから覚悟してね~」
「…………」
やっぱりな。
そうだと思った。
こんなに早い時間から買い物に行くんだもんな。
出掛ける前から憂鬱になる。
みかはストレス発散をすると意気込んで、目を輝かせていた。



