彼に握らされたのは、この家の鍵だった。

少し前まで私が使用していた合鍵。

私のお気に入りのキーホルダーが付いている。


彼は私が返した後も、これを外さず持っていてくれた事になる。

そんな些細な事にも嬉しくなって……。

つい握りしめる手に力が入る。



昨夜、食料を調達しに行く際に

玄関にあった彼の鍵を使わせて貰った。


パスワードは彼が元に戻してくれて、

私の誕生日でもある『0602』だと教わった。


そんな事1つで、私は嬉しくて仕方ない。

だって、大事に想われてるって分かるもの。


自然と頬が緩み始め、ドレッサーの鏡に映る自分をじっと見つめた。


真っ赤な顔をした自分。

見るからに恋する乙女だ。



ふと鏡越しで視界に入った壁掛け時計。

それを見た瞬間、我に返った。


大変、こんな所でもたもたしてられない!!


私は急いで自室を後にした。


戸締り、火の始末、他に確認する事は無いよね?

リビング、キッチンをぐるっと見回して、玄関へと。


玄関のドアノブを回した所で、

魔法に掛かったように身体がピタリと止まった。