オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



いやいやいやいや、京夜様、ご勘弁を。

誰も見ていないとはいえ、さすがにハードルが高すぎます。

彼の要求にどうやって応えてたらいいのか、狼狽えていると。

ヤバい、笑顔が消えてる!

しかも、綺麗な顔に深~いしわが……。

明らかに変化した彼の顔、

眉間のしわが苛立っていることを物語っている。

条件反射って恐ろしい。

彼の形相一つで、こうも体が反応するだなんて。

気が付いたら彼に首に抱きついていた。


「30点」

「へ?」


さっ、さんっ……、30点って何ッ?!

抱きつくくらいじゃダメってこと?

それとも私からアプローチしてないから、そもそも全然ダメだってことなの?

彼の言葉で完全に放心状態になってしまった。

すると、


「ったく、一晩中我慢してやったってのに……」

「ッ?!」


がっ、我慢?!

しかも、一晩中って………。

彼の言葉に驚愕した次の瞬間。

背中を優しく2回叩かれた。

それは、格闘技で言うギブアップの合図。

私は彼の首に巻き付けた腕を離し、彼の体と少し距離を取ると。


「結婚したら、一晩中優しく抱きしめて貰ったり、毎朝目が覚めたらラブラブな朝を迎えたいと言ったのはどこのどいつだ?」

「へ?…………………あ」


そう言えば、そんな事を言ったような。

でもあれは、酔った勢いというか何ていうか……。

結婚したらどんな夫婦になりたいか?っていう話をしてて、

どこにでもいるようなラブラブでイチャイチャしてるようなバカップルというか……。

ありきたりな新婚生活を夢みた時期もあると話したような。

でもでも、それは高校時代の時の夢の話であって。

今の今という事ではないような……。

そもそも、まだ、私たち、結婚してませんよね?

彼の言葉に釈然としないというか、腑に落ちないというか。

言い返したところでキレられても困るというか。

こういう討論をしてる時点で、ラブラブな朝じゃないような。

うーーーーーーーーん、この状況をどう収拾したらいいの?


30点を上回る行動を起こすしかないって事だよね?

あれこれ考えてはみたけど、結局はそれしか思い浮かばなかった。


ゴクリと生唾を飲み込んで、神経を集中させた。

羞恥を捨て、勇気を奮い立たせて顔を上げた、その時。