彼の言葉とまっすぐな瞳が、私の胸にジンと響く。
彼の妻になるという事、隣に立つという事を理解しているつもりでも、
やっぱり心のどこかでまだ受け入れられてない部分がある。
それはまだ挙式を終えてない、籍を入れてないという事もあり、
弱い自分が打ち消せないでいる。
『今ならまだ引き返せる』と。
「この先、ある事ない事多々言われ続けるだろうが、俺は決してお前を裏切ったりしない。これだけは誓える」
「………はい」
「まぁ何だ、その………。希和だけじゃなくて、守る者が増えても俺は俺であり続けるから……」
「っ…………」
京夜様が仰りたい事は痛いほどよく分かる。
いづれ結婚すれば、家族が増えるだろうという考えも。
だけど………。
京夜様の言葉に相槌が打てなかった。
胸中を今すぐ打ち明けるべきか。
どうやって現実を伝えたらいいか。
この先、この体とどうやって向き合っていけばいいのか。
考える事が多すぎて、簡単な言葉なのに返事すら出てこなかった。
苦しい想いが涙となって頬を伝う。
悔しくて切なくて申し訳なくて。
1分1秒でも早く伝えるべきなのだろうが、
まだ自分の心の中ですら整理出来てないのに……。
けれど、京夜様は私が嬉し涙を流したのだと思ってる。
とても穏やかな笑みを浮かべ、頬に伝う涙を拭ってくれていた。
「ありがとうございます、京夜様」
「落ち着いたか?」
『はい』とは返事が出来なかった。
目元を細めて、必死に笑顔を繕うのがやっと。
「朝食の準備をして来ますね」
「無理しなくていい。食事なら下でイートインしてもいいし、テイクアウトしても俺は全然構わない」
「いいえ、大丈夫です。昨夜、下処理をしておきましたので、すぐに出来ますから」
「………そうか?」
「はい」
彼の腕の中から上体を起こし、ベッドから出ようとした、その時。
右腕が後方に引っ張られた。
犯人はもちろん、京夜様。
「何か、忘れてるだろ」
「え?」
「ん」
はっ?!
ななななっ、な、何ですか?
えぇっと、それは、何ていうか、もしかして、…………アレでしょうか?
京夜様は楽しそうな笑みを浮かべながら、瞼を閉じた。



