オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



彼の言葉とまっすぐな瞳が、私の胸にジンと響く。

彼の妻になるという事、隣に立つという事を理解しているつもりでも、

やっぱり心のどこかでまだ受け入れられてない部分がある。

それはまだ挙式を終えてない、籍を入れてないという事もあり、

弱い自分が打ち消せないでいる。

『今ならまだ引き返せる』と。


「この先、ある事ない事多々言われ続けるだろうが、俺は決してお前を裏切ったりしない。これだけは誓える」

「………はい」

「まぁ何だ、その………。希和だけじゃなくて、守る者が増えても俺は俺であり続けるから……」

「っ…………」


京夜様が仰りたい事は痛いほどよく分かる。

いづれ結婚すれば、家族が増えるだろうという考えも。

だけど………。


京夜様の言葉に相槌が打てなかった。

胸中を今すぐ打ち明けるべきか。

どうやって現実を伝えたらいいか。

この先、この体とどうやって向き合っていけばいいのか。

考える事が多すぎて、簡単な言葉なのに返事すら出てこなかった。


苦しい想いが涙となって頬を伝う。

悔しくて切なくて申し訳なくて。

1分1秒でも早く伝えるべきなのだろうが、

まだ自分の心の中ですら整理出来てないのに……。


けれど、京夜様は私が嬉し涙を流したのだと思ってる。

とても穏やかな笑みを浮かべ、頬に伝う涙を拭ってくれていた。


「ありがとうございます、京夜様」

「落ち着いたか?」


『はい』とは返事が出来なかった。

目元を細めて、必死に笑顔を繕うのがやっと。


「朝食の準備をして来ますね」

「無理しなくていい。食事なら下でイートインしてもいいし、テイクアウトしても俺は全然構わない」

「いいえ、大丈夫です。昨夜、下処理をしておきましたので、すぐに出来ますから」

「………そうか?」

「はい」


彼の腕の中から上体を起こし、ベッドから出ようとした、その時。

右腕が後方に引っ張られた。

犯人はもちろん、京夜様。


「何か、忘れてるだろ」

「え?」

「ん」


はっ?!

ななななっ、な、何ですか?

えぇっと、それは、何ていうか、もしかして、…………アレでしょうか?

京夜様は楽しそうな笑みを浮かべながら、瞼を閉じた。