オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



「おっ、おはよう、……ございます」

「よく眠れたか?」

「………はい、お陰様で」

「そうか」


かなり近い距離から声が聞こえると思ったら、

京夜様の美顔がすぐそばに………。


「いつお目覚めで?」

「さぁ」

「起こして下さっても良かったのに」

「そんな無粋なことが出来るか」

「何故です?」

「好きな女の可愛い寝顔を独り占めするのに、理由なんて無いだろ」

「なっ…………」


どどどどど、どうしたの?

朝からおかしなワードが連発してるんだけど??

好きな女は頑張って理解するとしよう。

うん、結婚しようと決めた相手だもん。

好みじゃなくても時間をかけて好きになることもあるよね?

だけど、かっ、か、可愛い??

誰が、私が?!

ないないない、絶対ない。

今まで誰からも可愛いなんて言われたことない。

朱夏からは綺麗とはお世辞で言って貰ったことはあるけど、

流石に可愛いというワードは聞いた事が無い。

さらに独り占めって………。

何、これ。

もしや、言葉攻めの拷問か何か?

どこかに隠しカメラが付いてて、後で大爆笑するためのドッキリだとかじゃないよね?


必死に探し求めた答えはそれだった。

無意識に視線が泳ぐが見つからない。

超高級タワーマンションなのだから、隠しカメラも最新超小型だろう。

瞬きも忘れ、キョロキョロと見回してると。


「何かの儀式か?」

「へ?」

「朝起きたてですると、視力がよくなるとか?」

「はい?」

「最近、疲れると目が霞むから、俺もやってみようかな……」


何のことを仰ってるのか意味が分からず、京夜様に視線を向けると、

物凄い真剣な表情で眼球が右往左往している。

あ、しまった。

私が原因で変な勘違いを誘発してしまった。


素早く彼の目元を両手で塞ぎ、陳謝する。


「視力回復の運動ではありませんので、ご無理なさらず……」

「そうなのか?」

「………はい~~。ごめんなさい。でも、京夜様が悪いんですよ?朝から可愛いだのおかしなことを言うから」

「はぁ?俺のせい?」


私の両手を掴み、目元から外した彼はまっすぐ私の瞳を捕らえ、口を開いた。


「いい加減、自分に自信を持て。この俺が選んだ女なんだから」