「おっ、おはよう、……ございます」
「よく眠れたか?」
「………はい、お陰様で」
「そうか」
かなり近い距離から声が聞こえると思ったら、
京夜様の美顔がすぐそばに………。
「いつお目覚めで?」
「さぁ」
「起こして下さっても良かったのに」
「そんな無粋なことが出来るか」
「何故です?」
「好きな女の可愛い寝顔を独り占めするのに、理由なんて無いだろ」
「なっ…………」
どどどどど、どうしたの?
朝からおかしなワードが連発してるんだけど??
好きな女は頑張って理解するとしよう。
うん、結婚しようと決めた相手だもん。
好みじゃなくても時間をかけて好きになることもあるよね?
だけど、かっ、か、可愛い??
誰が、私が?!
ないないない、絶対ない。
今まで誰からも可愛いなんて言われたことない。
朱夏からは綺麗とはお世辞で言って貰ったことはあるけど、
流石に可愛いというワードは聞いた事が無い。
さらに独り占めって………。
何、これ。
もしや、言葉攻めの拷問か何か?
どこかに隠しカメラが付いてて、後で大爆笑するためのドッキリだとかじゃないよね?
必死に探し求めた答えはそれだった。
無意識に視線が泳ぐが見つからない。
超高級タワーマンションなのだから、隠しカメラも最新超小型だろう。
瞬きも忘れ、キョロキョロと見回してると。
「何かの儀式か?」
「へ?」
「朝起きたてですると、視力がよくなるとか?」
「はい?」
「最近、疲れると目が霞むから、俺もやってみようかな……」
何のことを仰ってるのか意味が分からず、京夜様に視線を向けると、
物凄い真剣な表情で眼球が右往左往している。
あ、しまった。
私が原因で変な勘違いを誘発してしまった。
素早く彼の目元を両手で塞ぎ、陳謝する。
「視力回復の運動ではありませんので、ご無理なさらず……」
「そうなのか?」
「………はい~~。ごめんなさい。でも、京夜様が悪いんですよ?朝から可愛いだのおかしなことを言うから」
「はぁ?俺のせい?」
私の両手を掴み、目元から外した彼はまっすぐ私の瞳を捕らえ、口を開いた。
「いい加減、自分に自信を持て。この俺が選んだ女なんだから」



