オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



なななななななななっ、何ですって?!

えっ?

ああああああぁぁぁぁあああっ!!


彼の言葉に反応するように瞼を押し上げると、

右側にいた彼が、私の左側に移動してる。

恐らく、私を跨いで場所を変えたんだと思うけど、

緊張と硬直してるあまりに状況を把握するのに時間がかかってしまった。


恥ずかしさのあまり動揺する私を見下ろし、満足そうな笑みを浮かべている。


「で?………どうして欲しいんだ?」

「っ?!」


どうして欲しいって………。

そんなこと、急に聞かれても。


完全に魔王のスイッチが入ってしまったようで、

京夜様は至極楽しそうに目元を細めた。


「あっ、あの、ですね………」


何て答えたらいいのか必死に考えてみたけど、答えが何一つ導き出せない。

すると、京夜様はそんな私をぎゅっと抱きしめ、優しい声音で……。


「おやすみ」


私の胸中を察してか、他には何も語らず。

本当に寝ようとしているのか、微動だにしない。

そんな彼の優しさが有難くて、胸がきゅっと締め付けられる。

今にも溢れ出しそうな涙腺をぐっと堪え、彼の胸に顔を埋めて。


「ディフューザー、………ありがとうございました」

「………ん」

「私好みの香りで凄く嬉しかったです。大切にしますね」

「ん。………いいから、寝ろ」

「…………はい」


後頭部に添えられた手に力が入った。

それは、もうこれ以上何も言うなという事で。

彼の優しさそのもの。


私の傷がまだ完全に癒えてないことも。

彼にはまだ伝えてないアノことでの苦痛が、表情に出てしまっていることも。

そして、籍を入れるまでは何もしないという約束に関しても。


私、松波 希和という人間を尊重してくれているという事が何より嬉しくて。

この人の為に、私は何をしたらいいのだろう?

そんな事をずっと考えていた。



















心地よい心音が眠りへと誘ったのか。

いつの間にか深い眠りについていた私。

気が付けば、朝を迎えていたようだ。

シェード越しに薄っすらと陽の光を感じて瞼を押し上げると。


「おはよ」

「ッ?!」


少し低めの穏やかな声音が降って来た。