オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



微かに感じる彼の体温。

心地よい眠りについているようで、規律のいい寝息を立てている。

そんな彼の体に触れようとそっと手を伸ばすと、

滑らかなシルクの布地に指先が触れた。

さらに指先を滑り込ませ、体温を感じれる場所へと。


つるッとした絹地越しに伝わる盛り上がった三角筋。

思わず破顔してしまった。

別に筋肉フェチというわけではないけど、

大好きな人だからこそ、ほんの少し触れただけでも分かってしまう。

遠目でも、影でも、声だけでも分かるし、

指先だけでも分かる自信がある。

それだけじゃない。

香りだって重要で、彼はオリジナルの香水を付けてるから

微かな残り香でさえ嗅ぎ分ける事が出来るようになったのだから、

警察犬も顔負けだと思う………うん。


完全に御影 京夜の熱狂的なファンというか、マニアというか。

もう犯罪すれすれなんじゃないかと思うほど、知り尽くしてるはず。

これからも、どんどん新たな一面を見つけては思うんだろうな。

『これって、私だけに許された特権だよね?』って。


深夜1時過ぎの密室。

しかも、泥棒のように気配を殺して寝室に侵入した挙句、

大好きな人が眠るベッドに入り込んだのだから、手の付けようがない。

脳内が極度の興奮状態なんだから、

あらぬ方向に思考が働くのも無理はない。


鼻息が荒くならないように呼吸だけは必死に制御して………。


触れた三角筋から少し下へ這わせると、形のよい二頭筋に到達した。

すると、触れられた感触に気づいたのか、彼の腕が僅かに動いた。

普通ならすぐさま手を離すべきなのかもしれないが、

私はさらに間を詰めるように身を寄せ、二頭筋から滑らせた指先が彼の指先へと辿り着いた。

そして、そっと握ってーーーー。


「ッ?!………希和?」

「ごめんなさい、起こしてしまって」


完全に私の存在に気付いた彼は、体の向きを変え少し慌てている。


「あの事件以来、寝るのが怖くて……」

「っ……」

「何もしなくていいんです。ただ隣にいてくれるだけで」

「………」

「それでも、………ダメですか?」

「フッ」


鼻で笑った彼は、握った私の手を解いて

ゆっくりと大きな円を描くようにして私の体を抱きしめた。