深呼吸した私は、
静かに肌掛け布団の端をつまみ
それをゆっくりと持ち上げて、
出来るだけ振動をさせないように体を忍ばせた。
彼の隣にーーーーー
普通ならベッドが軋むし、
潜り込んだら体が触れ合うだろうし、
そもそも、布地の擦れる音で気づかれる。
だけど、彼は深酔いしてるし
特注のキングサイズのベッドな上、
安物の寝具じゃないから、ガサガサした音は一切出ない。
勇気を出して手を伸ばす。
けれど、彼の体までは届かない。
緊張のあまり、今にも心臓が止まりそうで。
駆け引きが出来るほど、私には経験が無い。
だから、出来る事と言えば、ただ突き進むだけ。
じわりじわりと体を滑らせ
漸く彼の気配が感じられる場所に辿り着いた。
そこは、シトラスのボディーソープの香りと
アルコールの香りが絡み合う、…………特別な場所。



