マスコミに情報が漏洩しないように徹底的に処理をし、俺は空港に舞い戻っていた。
「あの男か……」
囲み取材を終え、移動した時だった。
俺の背後にグレーのキャップを被った男が、報道陣に紛れていた。
そして、希和が俺らの護衛と接触した、あの時だ。
映像に映る男は不敵に微笑んでいた。
そして、確信した。
希和は、これを事前に予測していたという事を。
だって、彼女は………。
自ら、男が握る刃物へと向かうように、
あり得ない方向へと体を捻っていたのだから。
そんな彼女は何事もなかったように歩き続けていた。
恐らく刃物が刺さった後、自ら刃物を隠し固定するようにクラッチバッグで押さえていたのだろう。
それにより、傷口がより深くなってしまったんだ。
俺の腕の中で力尽きた彼女の顔が……。
クソッ。
モニターに映し出された男を見据え、俺の拳はわなわなと震えていた。
そして、別のモニターに映し出された2人。
国内線のロビーのソファーに一人分空けて座っている。
グレーのキャップを被った男と八雲綾女の姿が。
ものの数秒、背合わせで会話し、八雲綾女は颯爽とその場を後にした。
そして、別モニターで男の足取りを追うと、
俺らが参列した式典の会場がある新ターミナルへと向かっていた。
やはり、黒幕は八雲綾女。
グレーのキャップを被った男は雇われた者という事が判明した。
今すぐこの手で八つ裂きにして太平洋に沈めても気が治まらん。
警察に通報するのは勿論だが、それだけでは解決しないと俺は踏んだ。
「吉沢」
「はい」
「今すぐ確認しろ、奴の居場所を」
「………承知しました」



