オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



私達の目の前に現れたのは、空港とは別世界の枯山水。

見事なまでに青海波を表現した白洲石と風情を彩る苔石。

そして、奥に映える青空と絶妙なバランスを醸し出す木々。

どのように施工されたのか、不思議でならない。


空港という雑踏の空間で、ここだけ異次元のように感じられた。


プレオープンだから幾分か静かかもしれないが、

それでも、無音という訳ではない。


一般客の人々も一瞬で魅了されたようで、

どこからともなく、拍手が沸き起こる。


その小さな日本庭園の脇に活けられた花々。

枯山水に四季をもたらしているようで。

ついうっとりと見とれていると、

花の後ろに衝立られた屏風が、スタッフの手によって移動してゆく。


「えっ……?」


思わず声が出てしまった。

だって、そこでは、袴姿の女性が電子ピアノで君が代を奏で始めたから。

しかも、聞き慣れた君が代じゃない。

外国の方々にも馴染んでもらえるようにジャズにアレンジされた君が代。

透き通る彼女の歌声は、ターミナルの天井をも突き抜け、

旅客機が羽ばたく大空に吸い込まれてゆく………。


ここは空港で、沢山の外国の方々も往来する。

ビジネスマンの疲労感や旅行客の熱気を掻き消すかのように。

心がスーッと洗われるような歌声に、思わず溜息が零れ出した。


すると、どこからともなくひそひそ声が漏れてきて、耳を傾けると。