彼女が俺を男として見てくれていると分かっただけで、十分だ。
20年近く思い続けていた女性が、
この先もずっと俺の傍にいてくれるのだから、
我慢する事なんて大したことない。
希和が結婚指輪の事を考えていただなんて、思いもしなかった。
式を挙げれば当然するものとばかり思っていたが、
よくよく考えれば、式の時だけで、しない男性は多い。
けれどそれって、相手の事を心から愛してないのでは?
いつまでも独身とみられたいとか、
自分はフリーだと偽って遊びたい、遊び足りないとか。
勿論仕事上、する事が出来ない人もいるだろう。
だからこそ、俺は……。
「希和」
「…………はい」
「指輪だが……」
「………はい」
「俺は、するつもりだ」
「えっ?………ホントですか?でも、京夜様のスタンス(スタイル)には不釣り合いのように思いますが……」
「ん、それは分かっている。仕事に家庭を持ち込まない主義だからな。家庭の匂いが漂うようなら半人前だしな。だが、結婚する以上、指輪は切っても切れぬモノだろ?」
「それは、そうですが……」
「それに、俺が堂々と身に着けていれば、無意味な害虫が寄って来なくなる」
「あっ、それはありがたい!」
さっきまで恥ずかしがって俯いていた彼女は、
すっかりいつもの元気な彼女になっていた。
「仕事で成功する者は、家庭を大事にするという。だからこそ、家庭は何よりも大切にするつもりだ」
「っ……、ありがとうございます。私も全力でお支え致しますので」
「ん、宜しく頼むな」
「はい!お任せ下さい!!」
照れながらも生き生きとした表情を浮かべる彼女。
俺は心の底から幸せを噛みしめていた。



