俺は苦笑いしか出来そうにない。
言えば言うほど自分の首を絞めそうだ。
彼女にだけはカッコイイ俺を見せたいのに
いつだって素の俺を見せてしまう。
無意識に溜息が漏れ出した。
「京夜様」
「………何だ」
「私、…………正直、安心しました」
「は?………何がだ?」
「お気づきでないかもしれませんが、京夜様はご自分の考えをあまり口にしたりしないお人なので……」
「…………」
「今のお気持ちを素直に口にして下さった事が、何より嬉しいです。それに……」
「………まだ、あるのか?」
希和は視線を泳がせた後、深呼吸した。
「京夜様が素直に仰って下さったので、この際、私も正直に申し上げます」
「…………ん」
「京夜様は、…………そういう事があまりお好きでないのだと思ってました」
「は?…………何でだ?」
「だって、いつも………抱き寄せたり、抱き締めたりするだけですし。キ、……キ、スだって、ごくたまぁ~にしかして下さらないし………」
「っ……」
「それに元々、大の女性嫌いだったし、私も私で、きゅんとさせるような可愛らしさもなければ、うっとり見惚れるほどの美貌の持ち主でもありませんし……」
希和はトーンダウンし、視線まで落とした。
「だから、…………京夜様がその辺にいる男性と同じだと分かって嬉しかったです」
「………嬉しい?」
「はい」
「俺が、イヤらしい目で見てても……?」
「むしろ、大歓迎です!」
「はッ?!」
「あっ………、い、今のは………聞かなかった事に………」
希和は耳まで真っ赤に染め上げ、両手で顔を覆った。
そんな彼女をぎゅっと抱きしめ、耳元にそっと囁く。
「でも、………楽しみはもう少しとっておこうな」
彼女は俺の胸に顔を埋め、コクコクと頷いた。



