オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



指輪だとぉ~ッ?!

じゃあ何か?

俺一人で脳内に花を咲かせて、浮かれてたって事か?

フッ、そういう事らしいな。


ある意味、彼女の視線が痛い。

そういう事を俺が考えていたと知られてしまった訳で。

別に恋人同士なんだし、挙式の日取りだって決まってる訳だし。

今更どうこう騒ぐ問題でもない。

だが、やはりばつが悪いな。


「俺は最初から“指輪”だと思ってたぞ」


俺は気恥ずかしさを隠す為、見え透いた嘘を口走っていた。


「そっ、…………そうですよね」

「何だ、信じてないのか?」

「…………だって」

「だってとは何だ。…………言ってみろ」


勝手に勘違いした俺が悪いのに、気まずさから彼女を責め立ててしまった。

だが、後には引けない。

明らかに八つ当たりしている俺は、最低な男だな。

心の中では冷静に捉えながら、口では真逆の事を言ってしまっている。

あぁもう本当に、自分で言っておきながら反吐が出る。


希和は俺の顔色を窺いながら、下唇をギュッと噛みしめた。


「先ほど、………“今からでも”と仰いました」

「………ん、言ったが、それが何…………あっ」


しまった。

指輪を今からする事なんて、出来る訳が無い。

普通、挙式に初めて嵌める物だし。

何より、まだ出来上がってないんだから。


俺らの結婚指輪は勿論フルオーダー品で、

一昨日、最終確認をしたばかりだ。

その際に『再来週になります』と言われたと、

希和にも伝えてあった訳で……。


自ら墓穴を掘ってしまい、俺は羞恥の極みに達した。