指輪だとぉ~ッ?!
じゃあ何か?
俺一人で脳内に花を咲かせて、浮かれてたって事か?
フッ、そういう事らしいな。
ある意味、彼女の視線が痛い。
そういう事を俺が考えていたと知られてしまった訳で。
別に恋人同士なんだし、挙式の日取りだって決まってる訳だし。
今更どうこう騒ぐ問題でもない。
だが、やはりばつが悪いな。
「俺は最初から“指輪”だと思ってたぞ」
俺は気恥ずかしさを隠す為、見え透いた嘘を口走っていた。
「そっ、…………そうですよね」
「何だ、信じてないのか?」
「…………だって」
「だってとは何だ。…………言ってみろ」
勝手に勘違いした俺が悪いのに、気まずさから彼女を責め立ててしまった。
だが、後には引けない。
明らかに八つ当たりしている俺は、最低な男だな。
心の中では冷静に捉えながら、口では真逆の事を言ってしまっている。
あぁもう本当に、自分で言っておきながら反吐が出る。
希和は俺の顔色を窺いながら、下唇をギュッと噛みしめた。
「先ほど、………“今からでも”と仰いました」
「………ん、言ったが、それが何…………あっ」
しまった。
指輪を今からする事なんて、出来る訳が無い。
普通、挙式に初めて嵌める物だし。
何より、まだ出来上がってないんだから。
俺らの結婚指輪は勿論フルオーダー品で、
一昨日、最終確認をしたばかりだ。
その際に『再来週になります』と言われたと、
希和にも伝えてあった訳で……。
自ら墓穴を掘ってしまい、俺は羞恥の極みに達した。



